確定申告|株の利益・配当にかかった高い税金を取戻す賢い申告の仕方

目 次

株の利益や配当には一律の高い税率が掛けられ重い負担となっている為、確定申告では個別の状況に対応した節税機会が与えられています!

◯株式や投信等運用には高い税率が掛けられています!

取引で得た利益や配当・分配金には、運用者の所得や生活実態に関わらず一律に20.315%(所得税15.315%、住民税5%)もの高い税率が掛けられています。

課税対象 所得税 住民税
上場株式の利益・配当 15.315%(0.315%は復興税  5% 20.315%

このため、現在の低預金利子下では、資産運用として株式や投信運用に注力せざるを得ず株式投資等で資産形成を図ろうとする一般の会社員や年金生活者には20%もの一律の税率は非常に重いものとなっています。

◯確定申告によって税を軽減できる機会が与えられています!

このため、確定申告では、個人の所得状況や取引で損失が出た場合、配当控除や損益通算等で税を軽減できる仕組みが設けられています。

具体的には、①配当控除により税額を下げる、②損益通算で譲渡所得(含む配当所得)を下げる、➂損を繰越して翌年以降の所得を下げる、④過去の繰越損と相殺して本年の所得を下げる、等により税金の軽減ができる仕組みがあります。

◯但し、所得税と住民税とでは、株取引に伴う所得の取り扱いに若干の違いがあるので「住民税の申告不要制度」の理解も重要になります!

株式等の利益や配当の取り扱いは、所得税と住民税とでは若干違いがあるため、確定申告すると住民税の負担増を招きかねないという問題がありました。これでは、節税の為の確定申告ができないため、平成29年度税制改正で、住民税では所得税と異なる課税方式が選べることになりました。

このため、住民税では、必要に応じて確定申告とは別の課税方式を選択する必要があります。(「申告不要制度」を市区町村住民税課に提出する)

以上から、仕組みをきっちり理解し上で、確定申告によって株等の運用にかかる税金をがっちり軽減しましょう!

目  次

・はじめに

・確定申告の課税方式には「総合課税方式」と「分離課税方式」の二通りがあり、いずれかを選択する

  「総合課税方式」とは

  「分離課税方式」とは

  「総合課税方式と分離課税方式の対比表」

・貴方の場合、どちらを選択するのが有利(得策)ですか?

・Ⅰ.総合課税方式の選択に当たっての留意点

  1.総合課税方式の税計算の流れ

  2.課税所得900万円以下にメリットがあり、低所得ほどメリット大!

  3.数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

  4.注意が必要!総合課税方式による「住民税」への影響と対策

・Ⅱ.分離課税方式の選択に当たっての留意点

  1.分離課税方式の税計算の流れ

  2.損や繰越控除が大きいほど税軽減(還付)効果が大きい!

  3.目的別に数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

   1)目的①「一部特定口座で損がある為口座間で損益通算して益を圧縮したい」

   2)目的②「今年度譲渡益と過去繰越損と相殺して益を圧縮したい」

   3)目的➂「損が残ったので、繰越して次年度以降の税軽減に生かしたい」

・最後に

はじめに

大半の方は、株式等の運用を証券会社等に「特定口座」を持ち「源泉徴収あり」で運用されているため、利益や配当にかかる税額計算や納税業務一切は証券会社等が代行してくれるので個人では基本的に確定申告の必要はありません。

しかし、確定申告には、税金を軽減できる仕組みがありますので、是非、運用状況に合った申告方法を活用して節税にチャレンジしてください!

なお、以下では、「特定口座」で「源泉徴収」を選択していることを前提とさせていただきます。(「一般口座」でも、基本的考え方は変わらないと考えます)

確定申告の課税方式には「総合課税方式」と「分離課税方式」の二通りがあり、いずれかを選択する

確定申告には、「総合課税方式」と「分離課税方式」の2通りの申告方法があり、申告には、どちらか一方しか選択できません。

「総合課税方式」とは

株取引による損益には一切触れずに、配当を「所得」として「給与等の他の所得」と合算して所得税を算出した後、「配当控除(配当の10.00%の金額)」が税額控除されて所得税が軽減されます。

※ {(給与等所得+配当所得)-所得控除}×所得税率=所得税-配当控除(配当金額の10%分)=確定所得税

(注意:住民税にも配当控除制度があり、住民税も総合課税方式のままだと配当の0.28%の配当控除が受けられますが、かえって不利益になります。この為「住民税申告不要制度」が必要になります。詳細は後述します)

従って、「株取引で利益(配当収入も含む)が出た」、「損益通算による還付金メリットよりも総額課税方式による配当控除のメリットの方が大きい」等から、配当に限定して節税したい時に総合課税方式を選択します。

「分離課税方式」とは

逆に、配当控除を受けず、又、給与や年金その他の所得とは関わりなく、株取引での「損益通算」や「繰越控除との相殺」等による利益圧縮で節税を図る仕組みです。

従って、損益通算で利益を圧縮した節税メリットが、総額課税方式の配当控除メリットよりも大きい場合に分離課税方式を選択します。

「総合課税方式と分離課税方式の対比表」
税軽減措置 節税の仕組みと選択の視点
総合課税方式 配当控除による税額控除 ◯株取引には一切触れず、配当を給与等の所得に合算して所得税を算出した後、「配当控除:配当額の10.28%」が税額控除される。

選択基準:株取引では損益通算や繰越控除の必要がない場合や利益が出ている場合、又、配当控除の方がメリットが大きい場合に選択する

分離課税方式 損益通算による利益圧縮 ◯給与や年金その他の所得とは関わりなく、株取引の「損益通算」や「繰越控除等の相殺」等による利益圧縮で税が軽減される。

選択基準:配当控除メリットよりも損益通算等によるメリットが大きい場合に選択する

貴方の場合、どちらを選択するのが有利(得策)ですか?

あなたの本年度の運用結果からどちらの方式を選びますか?

おおよそは、下表の目安等で見当がつくと思いますが、微妙な場合は、やはり、e-Taxで両方式を試算して有利な方を選択することが賢明だと思います。

[課税方式の使い分けの目安]

大体の目安です。実際には後述の留意点等を勘案してご判断願います。

目的 課税方式
一部の口座で損失があり損益通算して所得(利益、配当)を減らしたい 分離課税
利益(含む配当)を、過去の「繰越控除」で相殺して減らしたい 分離課税
損益通算しても損が残るので損を繰越したい 分離課税
どの口座にも損がなく、かつ過去の繰越控除もない 総合課税
分離課税で計算したメリットよりも配当控除のメリットの方が大きい 総合課税
配当控除のメリットよりも分離課税のメリットの方が大きい 分離課税

※分離課税で計算したメリットとは、損益通算などで大きく所得を減らしたことによる減税メリットのことです。

Ⅰ.「総合課税方式」の選択に当たっての留意点

「給与や年金所得が低いのに株取引による利益や配当への20%課税は高すぎる。売買で得た利益に対する20%はやむを得ないとしても、配当所得については総所得に見合った税率であってほしい」

と思われる方は多いのではないでしょうか?

こういう願いに適うのが、総合課税方式による配当控除の適用を受けることです。

もともと配当は、企業が法人税を納めた後の原資であるため、配当で個人に取得税をかけるのは二重課税ともなっているので、配当を所得として給与等に加算する代わりに、「配当控除」により二重課税を避けるという主旨もあります。

1.「総合課税方式」の税計算の流れ

証券会社等が発行する「特定口座年間取引報告書」をもとに申告します。

「特定口座年間取引報告書」には、「譲渡所得」、「譲渡損失」などとともに「配当所得」が記載されています。

配当を給与所得等と合算して所得税を算出した後、「配当控除」が税額控除されて「最終の所得税」となります。

この計算の流れを分解すると下表の①から⑤の流れとなります。

順序 求める額 計算式
「総所得額」 「給与または年金所得」+「配当所得」
「課税対象額」 「総所得額」-「社会保険料等の所得控除額」
「所得税額」 「課税対象額」× 所得税率(累進税率)
「最終の税額」 「所得税額」-「配当控除額」
「還付額」 「源泉徴収された給与・年金所得の納税額と配当の納税額」-「最終の税額」

※「配当控除額」は、配当所得の10.00%(参考:住民税の配当控除は2.8%)

2.課税所得900万円以下にメリットがあり、低所得ほどメリット大!

所得税は、「累進税率」であるため、配当控除によるメリットが享受できる対象は、下表の通り、課税所得900万円以下の方となります。

その中でも、低所得で配当所得の割合が高いほど配当控除のメリットが大きくなります。

なお、総合課税では全ての所得が合算されるため、給与や年金の他に、不動産家賃収入、事業所得、株式・建物・土地を除く譲渡所得、一時所得等があると、その分メリットが少なくなります。

[Ⅰ表 課税所得額別に見た配当控除による減税効果]

・所得税率は、課税所得額に対応した累進課税

・配当控除率は、1000万円まで10%、1800万円まで5%、1800万以上は無し

・実質負担率は、所得税率が配当控除率分負担減になった実質負担率を表す

・源泉徴収率は、利益や配当で源泉徴収された率を表す

・軽減税率は、配当控除により源泉徴収された税率分がいくら分軽くなるかを示す!

課税所得金額 所得税率 配当控除率 実質負担税率 源泉徴収税率 軽減税率
(所得‐所得控除) 累進税率 配当に乗じる 既に徴収済み 還付率
(A) (B)  (C)=A-B (D) C-D
195万円以下 5% ▲10% 0% 15% ▲15%
330万円以下 10% ▲10% 0% 15% ▲15%
695万円以下 20% ▲10% 10% 15% ▲5%
900万円以下 23% ▲10% 13% 15% ▲2%
1000万円以下 33% ▲10% 23% 15% 8%追徴
1800万円以下 33% ▲5% 28% 15% 13%追徴

※源泉徴収税率には復興特別所得税0.315%がありますが省略しました。

また、「配当控除額」は、住民税分を含めると配当所得の10.28%となりますが、ここは、所得税分のみです。なお、投信等の元本取り崩しによる分配金の場合の「配当控除額」は、低くなります。

[結 論:課税所得900万円以下で低所得ほどメリット大!]

・給料や年金、その他所得等に配当を含めた課税所得が900万円以上の場合はメリットがないが、695万円以下の人にメリット(税軽減)が得られる。

・695万円以下でも、合算所得が低いほどメリットが大きく、かつ配当所得の比率が高いほどメリットが大きくなる。

3.数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

◯年金生活者で、年金310万円と配当90万円あわせた収入が400万円、両方で源泉徴収された所得税が22.4万円のケース

[申告データー]

①年金収入が310万円で、年金で源泉徴収された所得税は6.6万円、株式の配当は総額で90万円で所得税13.8万円が源泉徴収された。

②確定申告のため整理したところ、年度末での社会保険料控除額、生命保険料控除額、配偶者控除額、基礎控除額など所得控除額額は、合計で130万円となった。

「源泉徴収ありの特定口座」で運用)

「還付金額算出のシミレーション」

年収は、年金310万円と配当90万円合わせた400万円ですが、所得にすると、年金所得が190万円、配当所得が90万円で「合計所得」280万円となります。

ここから社会保険等の「所得控除額額」130万円を差し引くと、「課税所得」は、280∸130より150万円となります。

この課税所得150万円に所得税率5%(上述Ⅰ表の195万円以下に該当)を乗じた7.5万円が所得税となります。

ここから「配当控除額」が税額控除されて「最終の所得税」が確定されます。

「配当控除額」は、配当の10%額ですから9万円(90万円×10%)となります。

従って、「確定所得税」は、「-2万円」(7.5万円ー9万円)となりますが、国から税金を徴収するわけにはいかないので「0円」、つまり税の納入は不要となります。

このため、源泉徴収された所得税が、年金分と配当分合わせて「20.4万円」ありますので、これが還付の対象となり「還付金20万円」が還付されます。」

これを表を使って表すと下表のようになりますの単位 万円

収入 所得 所得控除 課税所得 確定課税 配当控除 申告課税 源泉徴収税 還付
年金 310 190 130 60 5.0% 6.6
配当 90 90 90 15.3% 13.784
合計

400

280

130

150

5.0%

7.5

9.0

-1.5

20.384

20.384

[表の説明]

年金と配当所得の合計280万円(①)から所得控除130万円(②)を差し引いて課税所得150万円(③)を求め、所得税率(課税所得額ランク別Ⅰ表)の5%(④)を乗じて課税額7.5万円(⑤)を確定します。

そして、この税額から配当控除額(配当90万円×10%=⑥9万円)を税額控除し申告する課税額(⑦‐1.5万円)が確定します。ここでは「‐1.5万円」となっていますが、税金を徴収するわけにはいきませんので「0」とカウントされます。

そして「税金が0でいいにも関わらず源泉徴収された所得税が、年金分と配当分合わせて「⑧20.384万円」ありますので、これが還付の対象となり「⑨還付金20万円」が還付されます。」

4.注意が必要!総合課税方式による「住民税」への影響と対策

○住民税で総合課税方式の配当控除を受けると負担増に繋がるので、確定申告で総合課税をされた場合、住民税では不要申告手続きをとることをおすすめします!

下表の通り、住民税の給与等所得に対する税率は「10%」であることから、住民税の配当控除「2.8%」の適用を受けても、実質「7.2%」の税率となるので、配当で源泉徴収された「5%」よりかえって負担増となります。

[Ⅱ表 住民税:課税所得額ランク別に見た配当控除の減税効果]

課税所得金額 住民税率  配当控除率 実質の負担税率 源泉徴収税率 税軽減効果
(A) (B)  (C)=A-B (D) C-D
1000万円以下 10% 2.8% 7.2% 5% 2.2%追徴

また、配当込みの課税所得が、次年度の住民税算定基礎(所得割)に適用され負担増になります。(住民税は昨年度の所得を基礎にするため)

さらに、住民税の課税所得を基準とする国民健康保険料、介護保険料、児童手当等の負担増にも繋がります。

確定申告で総合課税方式を選択し、住民税で何もしなければ、確定申告の申告内容がそのまま適用されます。

このため、確定申告で総合課税をされた場合は、住民税では不要申告の手続きをとることをおすすめします。

○実際に数字を使った住民税のシミレーション

先程の事例で住民税でも総合課税だと下表のようになります。(金額の単位 万円)

収入 所得 所得控除 課税対象所得 税率 確定課税額 配当控除額 申告課税額 源泉徴収税額 追徴金
年金 310 190 117 73 10.0% 7.3
配当 90 90 90 5.0% 4.5
合計 400

280

117

163

10.0%

16.3

2.5

13.8

11.8

2.0

年金と配当所得の合計280万円(①)から、所得控除117万円(②)を差し引いて課税対象所得163万円(③)を求め、住民税率の10%(④)を乗じて課税額16.3万円(⑤)を確定します。

この税額から配当控除額2.5万円(⑥配当90万円×2.8%)を税額控除し、申告する課税額13.8万円(⑦)が確定します。

しかし、源泉徴収された住民税が、年金分と配当分合わせて11.8万円(⑧)なので、申告の課税額13.8万円(⑦)に対し2.0万円(⑨)の不足が生じ、追徴されることになります。

○住民税「申告不要」の手続は確定申告前に!

異なる課税方式の選択には「住民税申告書」を市区町村へ提出することが必要です。

住民税で異なる課税方式を選択する場合は、確定申告書を提出する日以前に、別途、住民税の申告書を市区町村に提出する必要があります。詳細はお近くの市区町村窓口にお問い合わせください。

参照⇒「確定申告と異なる住民税の課税方式選択で株式投資を節税!」

Ⅱ.「分離課税方式」の選択に当たっての留意点

分離課税方式は、配当控除には一切触れず、又、給与や年金その他の所得とは関わりなく、株式等の譲渡所得や配当に限定し、売買で生じた損失を活用して「損益通算や繰越控除」等により税軽減を図ることができる仕組みです。

従って、損益通算で利益を圧縮した節税メリットが、総額課税方式の配当控除メリットよりも大きい場合に選択します。

1.「分離課税方式」の税計算の流れ

証券会社等が発行する「特定口座年間取引報告書」をもとに申告します。

「特定口座年間取引報告書」には、「譲渡所得」、「譲渡損失」、「配当所得」、「源泉徴収税額」等が記載されています。

複数の証券会社等で「特定口座」を持ち「源泉徴収」を選択していれば、それぞれの口座で同様に源泉徴収が完了しています。

従って、分離課税方式では、それぞれの口座(1つだけであればより簡単)に記載の譲渡所得(損失所得)と配当額を使って目的に合わせて計算すれば還付金が試算できます。

分離課税方式では、当然ですが、譲渡所得や譲渡損失、配当所得の大きさによって還付金の大きさが変わりますので、損が出たから分離課税が有利だとは一概に言えません。

あくまでも両方式を試算した上で、かつ、住民税などへの影響も踏まえて判断されることをことをおすすめします。

2.損や繰越控除が大きいほど税軽減(還付)効果が大きい!

分離課税方式では、一つの口座で損が大きく出た場合や、過去の繰越控除(損の繰越)額が大きいほど、利益と相殺できる額が大きくなる為、申告メリットが大きくなります。

損が大きすぎて相殺できる利益が足りなければ、損は翌年以降に繰越ができ、翌年以降の利益を相殺できる権利が留保できることになります。

従って、損が大きければ大きいほど、分離課税選択のメリットは大きくなります。

但し、受け取り配当額が大きく配当控除のメリットが大きければ、e-Taxを使って比較してみることが賢明だと思います。

3.目的別に数字を使った「還付金額」算出のシミレーション

数字の大きさにより税軽減効果がどう変わるか、総合課税方式と比較できるように表にしました。

簡単にいうと、損益通算や相殺によって得られる税軽減額は、「損×15.315%」となります。(もちろん損失額以上に益(含む配当)があることが必要です)

なお、総合課税方式との比較は、前述した年金者モデル(年金収入が310万円、配当収入が90万円)の「所得税の還付金20万円」との対比でみます。

1)目的①「一部の特定口座で損が出たので口座間で損益通算して益を圧縮し税を軽減したい」

複数の「源泉徴収ありの特定口座」を持っていて、一部口座で損(配当を含めても)が出ているため、適当な口座間で「損益通算」し益を減らし税還付を受けるのが目的です。

あくまでも損に見合う口座を選んでその口座の益を減らせば良いのです。(すべての口座を

取り上げる必要はありませんので、ご注意を!

[シミレーション]

◯2つ証券会社(A社、B社)で特定口座を持っていて、それぞれの口座の年間取引結果が下記の3ケースを想定。⇒損失の大きさを変えて比較

ケース 口座名 損益と配当収入及び支払った所得税合計額
A口座 利益200万円と配当45万円で益合計245万円、源泉徴収税38万円
B口座 損失100万円と配当45万円で損合計 55万円、源泉徴収税 0
A口座 利益200万円と配当45万円で益合計245万円、源泉徴収税38万円
B口座 損失200万円と配当45万円で損合計155万円、源泉徴収税 0
A口座 利益400万円と配当45万円で益合計445万円、源泉徴収税68万円
B口座 損失300万円と配当45万円で損合計255万円、源泉徴収は 0円

<ケースⅠの場合>

A口座では、所得合計が245万円(200+45)で所得税38万円が源泉徴収されている。

B口座では、損合計が-55万円(-100+45)で所得税は0で納めていない。

この二つの口座を合計して損益通算すると、A口座とB口座を合わせた所得合計は190万円(245-55)であり、これに株取引所得税15.32%を乗じると29万円となる。

従って、実際に負担すべき所得税が29万円でいいにもかかわらず既に38万円を納付しているので、9万円(38-29)が軽減され還付されることになります。

<ケースⅡの場合>

A口座では、所得合計が245万円(200+45)で所得税38万円が源泉徴収されている。

B口座では、損合計が-155万円(-200+45)で所得税は0で納めていない。

この二つの口座を合計して損益通算すると、A口座とB口座を合わせた所得合計は90万円(245-55)であり、これに株取引所得税15.32%を乗じると14万円となります。

従って、実際に負担すべき所得税が14万円でいいにもかかわらず既に38万円を納付しているので、24万円(38-14)が軽減され還付されることになります。

<ケースⅢの場合>

A口座では、所得合計が445万円(400+45)で所得税68万円が源泉徴収されている。

B口座では、損合計が-255万円(-300+45)で所得税は0で納めていない。

この二つの口座を合計して損益通算すると、A口座とB口座を合わせた所得合計は190万円(245-55)であり、これに株取引所得税15.32%を乗じると29万円となります。

従って、実際に負担すべき所得税が29万円でいいにもかかわらず既に68万円を納付しているので、39万円(68-29)が軽減され還付されることになります。

以上の様に、損失額が大きいほど分離課税方式の税軽減効果は大きくなります。

ここでは、損失を超える利益(含む配当)がある場合を想定しましたが、利益が足りなければ損は翌年以降にこち越せます。(「繰越控除」)

これらを、表にしたものが下表です。なお、この表では、住民税でも同様な計算で還付金が受けられることを表しています。

ケース別税額計算過程表と還付額(単位 万円)

ース

口座 株式等の所得 所得税 住民税 合計
譲渡所得 配当所得 所得合計 所得税 所得税額 源泉徴収分 還付金 住民税 住民税額 源泉徴収分 還付金 源泉徴収分 還付金
A 200 45 245 15.32% 38 38 5.00% 12 12
B -100 45 -55 15.32% -8 0 5.00% -3 0
通算 100 90 190 15.32% 29 38 8 5.00% 10 12 3 50 11
損益通算で8万円還付 3万円還付 計11万円
A 200 45 245 15.32% 38 38 5.00% 12 12
B -200 45 -155 15.32% -24 0 5.00% -8 0
通算 0 90 90 15.32% 14 38 24 5.00% 5 12 8 50 31
損益通算で24万円還付 8万円還付 計31万円
A 400 45 445 15.32% 68 68 5.00% 22 22
B -300 45 -255 15.32% -39 0 5.00% -13 0
通算 100 90 190 15.32% 29 68 39 5.00% 10 22 13 90 52
損益通算で39万円還付 13万円還付 計52万円

分析から言えること

①前述の総合課税方式でシミュレーションした年金者モデルは、配当合計が90万円で還付金を試算したところ、所得税が20万円還付されることになりました。

このモデル者のケース(配当90万円)を分離課税方式で申告した場合、この配当控除による効果20万円を上回る効果が得られるのは、譲渡損が200万円以上あるⅡとⅢのケースとなります。

簡単に言うと、損失を上回る利益(含む配当)があれば、「損×15.315%」が節税額(還付金)になりますので、20万円以上の節税メリットを得るには、20万円÷15.315%=140万円の損失があればいいことになります。

②上表でわかるように、確定申告を分離課税方式で申告し、そのままにしておくと、株に掛けられた住民税5%分の還付も受けられるので、「総合課税で確定申告し住民税で不要申告する場合」に比べて還付金は多くなります。

しかし、次年度の住民税の算定基礎に、損益通算後の株式所得(譲渡損益+配当)が含まれるので、益が大きく残ると住民税の負担が大きくなる可能性があるので注意が必要です。

くれぐれも、口座間で損益通算する場合は、益が大きく残らないよう益の小さい口座との損益通算に限定して申告しましょう。

結局は、住民税については、還付金の大きさと住民税等への負担増の大きさ等の比較から判断しなければならないところがあり、住民税への影響が大きければ、住民税の還付を断念して、不要申告の手続きをとることも必要です。(住民税での還付金の大きさと、翌年の住民税負担の大きさを比較する必要があります)

2)目的②「今年度の譲渡益と過去の繰越損と相殺して益を圧縮して税を軽減したい」

過去に損が出て確定申告で繰越控除(3年間を限度として損を繰り越せる制度)の申告をしている場合に、本年度に利益(含む配当)が出たので、繰越控除と相殺して、本年度の利益に対して源泉徴収された所得税等の還付を受けるのが目的です。

あくまでも繰越損に見合う口座を選んでその口座の益を減らせば良いのです。(すべての口座を取り上げる必要はありませんので、ご注意を!

[シミレーション]

◯本年度は利益と配当を合わせ大きく収益がでた。また過去3年間において損失があったので繰越控除分がある。このため、繰越控除を使って本年の収益を圧縮して、支払った税金の還付を受けたい。

このため、今年の収益と繰越控除額の大きさを変えたケースを2つシミュレーションしました。

<ケースⅠの場合>

本年度収益は、利益400万円と配当90万円の合計が490万円となり所得税75万円が源泉徴収されている。

繰越控除には有効分(3年以内)110万円があるので、これと損益通算すると、本年の収益は、380万円(490-110)に圧縮でき、これに本来の所得税率15.32%を乗じると納めるべき税金は、58万円でいいことになる。

従って、既に源泉徴収された75万円から17万円(75-58)が税軽減分として還付されることになります。

株式等の所得 所得税 住民税 合計
譲渡 配当 所得合計 所得税 税額 徴収分 還付金 住民税 税額 徴収分 還付金 徴収分 還付金
本年 400 90 490 15.32% 75 75 5.00% 25 25
繰越 -110
通算 380 15.32% 58 75 17 5.00% 19 25 6 100 22
損益通算で17万円還付 6万円還付 計23万円

<ケースⅡの場合>

本年度収益は、利益400万円と配当90万円の合計が490万円となり所得税75万円が源泉徴収されている。

繰越控除には有効分(3年以内)310万円があるので、これと損益通算すると、本年の収益は、180万円(490-310)に圧縮でき、これに本来の所得税率15.32%を乗じると納めるべき税金は、28万円でいいことになる。

従って、既に源泉徴収された75万円から47万円(75-28)が税軽減分として還付されることになります。

株式等の所得 所得税 住民税 合計
譲渡 配当 所得合計 所得税 税額 徴収分 還付金 住民税 税額 徴収分 還付金 徴収分 還付金
本年 400 90 490 15.32% 75 75 5.00% 25 25
前年 -310
通算 180 15.32% 28 75 47 5.00% 9 25 16 100 63
損益通算で47万円還付 16万円還付 計63万円

分析から言えること

①前述の総合課税方式でシミュレーションした年金者モデルは、配当合計が90万円で還付金を試算したところ、所得税が20万円還付されることになりました。

このモデル者のケース(配当90万円)を分離課税方式で申告した場合、この配当控除による効果20万円を上回る効果が得られるのは、譲渡損が200万円以上あるⅡのケースとなります。

簡単に言うと、繰越損を上回る利益(含む配当)があれば、「損×15.315%」が節税額(還付金)になりますので、20万円以上の節税メリットを得るには、20万円÷15.315%=140万円の損失があればいいことになります。

②上表でわかるように、確定申告を分離課税方式で申告し、そのままにしておくと、株に掛けられた住民税5%分の還付も受けられるので、「総合課税で確定申告し住民税で不要申告する場合」に比べて還付金は多くなります。

しかし、次年度の住民税の算定基礎に、損益通算後の株式所得(譲渡損益+配当)が含まれるので、益が大きく残ると住民税の負担が大きくなる可能性があるので注意が必要です。

くれぐれも、損益通算して益が大きく残る場合は総合課税方式にするか、住民税不要申告制度を活用するか精査が必要です。

3)目的➂「繰越控除や損益通算しても大きな損が残ったので、損を繰越して次年度以降の税軽減に生かしたい」

シミレーションは省略します。

最後に

「総合課税方式」と「分離課税方式」のどちらが税軽減に有利であるかは、およその見当はつきますが、住民税や住民税をもとに決定される国民健康保険料や介護保険料、児童手当に反映されて負担増も考慮して、微妙な場合はそれぞれを試算の上で判断することが重要です。

このような時は、「e-tax」が重宝なツールとなります。(確定申告|1月はe-Taxで還付申告の準備をしよう!

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節税に重宝な「ふるさと納税」の利用!

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