児童手当は、申請しないと貰えないし、遅れた分は無効になります。知らないと損します!
なお、2024年度から、児童手当は、高校生も支給対象になり、第3子以降の手当も増額されます。さらに、これまで所得によって不支給になったり制限されていた所得制限が撤廃されます。
このため、あらためて制度を確認しておきましょう!
Ⅰ.児童手当制度とは
児童手当は、1971年制定の「児童手当法」により支給されてきましたが、2012年の「子ども・子育て支援法」により抜本的改正が行われ現行の姿になりました。
1.制度の主旨
児童手当は、子供の生活の安定と健やかな成長が図れるよう養育者を支援するものです!
児童を養育する方に手当を支給することにより、家庭等における生活の安定及び次代を担う児童の健全な育成に資することを目的としています。
「子ども・子育て支援法」第一条
「子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする」 |
2.財源
児童手当等の財源は、国、地方(都道府県、市区町村)、事業主拠出金で構成され、事業主拠出金は、「子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)」として、会社や自営業から従業員の厚生年金加入員の標準報酬月額及び標準賞与額を基準として、拠出金率(1.5/1000)を乗じて事業主が拠出しています。
※ 事業主拠出金の一部を財源として児童育成事業(放課後児童クラブ等)を実施。
3.制度の概要
子どもの養育支援として、0歳から中学生(24年度からは高校生)までの児童を養育する保護者に、「児童手当」又は「特例給付」が支給されます!
※ 児童とは、児童福祉法で、満18歳未満の者をいう。児童は、乳児・幼児・少年に分ける。
1)支給対象者
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している世帯主(夫婦共働きの場合は年収の高い方)が支給対象者になります。
(1)「児童手当支給対象者」と「特例給付支給対象者」
手当は、世帯主の前年度の所得が下表の「所得制限限度額」以内であれば、「児童手当」(月額1万円~1万5千円)が支給され、上回ると「特例給付」(児童1人につき一律5,000円)の支給となります。
なお、高所得者への「特例給付」は、2021年2月2日に、待機児童の解消に必要な財源の確保につなげる児童手当法改正で、2022年10月以降は、下表の「所得上限限度額」を超える年収がある場合は、「特例給付」の対象からを除外されました。
(注)なお、2,024年度から所得制限は撤廃され、収入にかかわらず「児童手当」が支給されるようになる見こみです! |
(2)「所得制限限度額」と「所得上限限度額」とは
児童手当は、世帯主の所得が一定額以内、下表の「所得制限限度額」を下回る場合に支給されますが、これを上回ると「特例給付」の支給対象になります。
また、2022年10月より、下表の「所得上限限度額」を超えると不支給となりました。
このため、児童手当の支給対象に該当するか否かは、下表の「所得制限限度額」と「所得上限限度額」の算定方法を理解しておく必要があります。
◎限度額は、扶養親族の数で変わる!
「所得制限限度額」は、下表の通り、扶養人数が3人の世帯(児童2人と年収103万円以下の配偶者を扶養)の場合は、年収960万円が限度額となります。
従って、これを下回る年収の場合は、「児童手当」の支給対象となり、上回れば、「特例給付」の支給対象になります。
しかし、扶養人数が5人の世帯(児童4人と年収103万円以下の配偶者を扶養)の場合は、年収1,040万円が限度額となり、これを下回る年収の場合は、「児童手当」の支給対象となります。つまり、扶養親族が多ければ多いほど、限度額所得は高くなり、「児童手当」の対象になりやすくなります。
「所得上限限度額」は、下表の通り、扶養人数が3人の世帯(児童2人と年収103万円以下の配偶者を扶養)の場合は、年収1200万円が限度額となります。
従って、これを下回る年収の場合は、「特例給付」の支給対象となり、上回れば、の支給対象外になります
しかし、扶養人数がより少なければ、所得制限となる年収の目安は1,200万円よりも低くなり、逆に、扶養人数が多ければ、所得制限となる年収の目安は1,200万円よりも高くなります。
(参考1)扶養親族数で決まる所得制限限度額
・所得制限限度額は、上表の通り扶養親族等の人数で異なります。
・扶養親族1人につき38万円を622万円に加算していく。但し、扶養親族が老人控除等の場合は44万円となる。
・5人以上も同様の計算で限度額が決まります。
なお、「所得限度額」を「給与収入額」に置き換えると下表のような金額となります。
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※「収入額」は、給与収入のみで計算していますので、ご注意ください。
つまり、扶養親族が3人いるとすると給与収入が960万円未満であれば限度内ということになり、「児童手当」を受けられることになります。
2)手当額(児童手当又は特例給付金)
子供の年齢、子供の人数、受給者の所得額などに応じて手当(受給額)が区分されています。
(1)児童手当
年収が960万円程度(子ども2人の専業主婦世帯の場合)を下回る世帯主に対し、子ども1人につき、3歳未満には月額15,000円、3歳以上から中学生までには月額10,000円が支給されます(第3子以降は3歳から小学校修了まで月額15,000円に引上げ)
児童の年齢 | 児童手当(一人当月額) |
3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳以上小学校修了前 | 10,000円(第3子以降は15,000円) |
中学生 | 一律10,000円 |
※「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。
(2)特例給付
年収が960万円程度(子ども2人の専業主婦世帯の場合)を上回りかつ1200万を下回る世帯主に対し子ども1人につき月額一律5,000円が支給されます。
児童の年齢 | 特例給付(一人当月額) |
3歳未満 | 一律5,000円 |
3歳以上小学校修了前 | |
中学生 |
※「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。
(3)世帯主所得の算定方法
世帯主の所得は、市民税課税台帳をもとに、6月分~12月分の手当は前年中の所得、1月分~5月分の手当は前々年中の所得で判定します。
なお、所得は、給与所得控除後の金額から8万円を引いた額で、次の控除を受けている場合は、所得から控除できます。
控除項目 | 控除額 |
老人扶養 | 一人につき60,000円 |
特別障害者 | 40万円 |
特別寡婦 | 35万円 |
雑損、医療費、小規模企業共済等掛金 | 相当額 |
寡婦(寡夫)、障害者・勤労学生 | 27万円 |
3)支給時期
原則として、毎年6月、10月、2月に、それぞれの4カ月分を支給します。例)6月の支給日には、2~5月分の手当を支給します。
子どもが誕生後、児童手当の認定請求申請を行うと、申請月の翌月から支払われます。
父母の内、所得の高い方の名義口座に振り込みされます。万一、離婚などの場合は、子供と同居している人に支給されることになっています。(手続きが必要)
4)手続
住所地の市町村の窓口(公務員の場合は勤務先)に「認定請求書」を提出することが必要です。
認定請求のあった月の翌月分から支給が開始されます。
※令和4年6月分より所得上限限度額以上の場合は手当の支給対象外となります。
5)補完制度:「児童扶養手当」、「児童育成手当」
「児童手当」は、児童を養育する保護者に給付されますが、離婚や死亡などでひとり親家庭になった方などの場合は、「18歳に達する日以後最初の3月31日までの児童」または、「20歳未満の政令で定める程度の障害の状態にある児童」を監護している父子・母子家庭の父または母や、父母に代わってその児童を養育している方に生活支援として「児童扶養手当」および「児童育成手当」が支給されます。
「児童扶養手当」
受給者の所得制限のほか同居の扶養義務者についても所得制限が設けられており、また、養育費を受け取っている場合はその8割が受給者の所得として算入されます。
そのほかに、受給者または児童が公的年金を受給する場合、手当額から年金額を差引いて支給する併給制限もあります。(手当の額より年金の額が高いときは、手当は支給されません。)
「児童育成手当」
受給者のみに所得制限が設けられており、限度額は「児童扶養手当」よりも高く設定されています。
同居の扶養義務者の所得制限や養育費の所得算入、年金受給による手当額の併給制限はありません。
Ⅱ.児童手当に関する留意点
1.申請しないともらえず、申請が遅れると無効に!
児童手当は、申請しないと給付を受けられません。
また、15日以内に申請しないと遡っては給付が受けられなくなります。申請漏れや申請遅れで損する人もいるようです。(約1割程度)
2.夫婦いずれか高い方の所得で「制限額」が用いられる
3.「制限額」は扶養人数によって金額が変わる
4.15日以内の申請ルール
出産や他の市区町村から転入した時は、その翌日から15日以内に市区町村に「認定請求書」の提出が必要。申請が遅れたり、月をまたいでしまうとその分もらえなくなります。
変更があった場合も市区町村に届け出が必要です。
なお、毎年6月に市区町村から現況確認のための「現況届」が送られてきましたがこの手続きは廃止されました。
Ⅲ.最後に
児童手当は、「子ども・子育て支援法」により、子供の生活の安定と健やかな成長が図れるよう養育者を支援する制度です。
2024年に制度が大きく変わりますが、児童手当は、申請しないともらえず、申請が遅れると、その分は無効になります。
従って、子供生まれたり、扶養者数が変わればすぐに申請しましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。